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管理薬剤師の仕事

薬局薬剤師における長時間労働を解決するための課題と対策

近年、長時間労働に関する取り組みが多くの企業で行われているが、薬剤師を取り巻く環境においてはその対策がほとんど進んでいないのが現状となっている。薬剤師の長時間労働に関する問題は、「職場における問題」に起因する事がほとんどだからである。

薬局を例にとって考えてみよう。大手チェーン薬局・ドラッグストアへ就職する学生が増える中、各企業ともコンプライアンスや労務管理の観点から、長時間労働を是正する取り組みを行っている。それはすでに大手企業を中心とした一般企業では広く行われている事であるが、「本社部門でのweb上で社員の勤怠管理」となる。

例えばある正社員薬剤師の勤怠・残業時間に関する状況について、専用のシステムを用いて労務管理を行い、月に30時間、45時間などの区切りを設け、それを超えるようであれば会社として対策を行う事になる。

(※労働基準法上、労働時間は1日8時間、週40時間までであるが、36協定を結ぶことにより「月45時間、年間360時間まで」の残業が認められる)

しかし都心部など比較的薬剤師が充足している地域であるならば、長時間労働社員を把握した上での「すみやかな対策」を施すことも可能であるが、いくら大手チェーン薬局といえども、地方となると事情が異なる。東京都に限って言っても、23区外から外れた地域では薬局も点在してしまうケースが多く、派遣を含めた他の薬剤師による勤務の穴埋めでは、対症療法的な長時間労働是正作になってしまう事になる。

こうして根本的に解決が難しい事の要因としては、薬剤師不足の他に、薬局の営業時間が対応する医療機関に依存していることが大いに関係する。週に48時間開局(8時間×5日)している薬局であれば比較的長時間労働が発生しにくいが、実態としては週50時間を超えるなど、残業ありきの勤務体系にならざるを得ないケースが多いからだ。地域支援体制加算を算定しているとして、月~土曜まで開局しているケースを2パターン挙げる。

【ケース1】営業時間:9:00~18:00

【ケース2】営業時間:9:00~19:00

ケース1の場合であれば、月~土までの営業時間が48時間であり、日曜の他に平日の1日を従業員の休日(週5日勤務)とすれば、残業は18:00以降に発生した業務、例えば薬歴などに限定的になるため長時間労働は発生しにくい。しかしケース2であると、5日間勤務すると必然的に45時間労働となる。

もちろんこれが薬剤師人数の比較的多い薬局であれば、10時出勤や、18時退勤の日を設けるなどのシフト制を取ることにより、問題なく長時間労働を回避する事が出来る。しかし実態としては、正社員においては多くの場合で営業時間内は勤務を行う必要が出てくる可能性が高く、それは薬局の貴重な労働力であるパート薬剤師の雇用体系と密接に関連する。

パート薬剤師は薬局運営においては欠かせない存在だが、その一方で勤務時間が17時までなど限定的である。夜間帯のみのパート薬剤師はかなりまれなケースと言っても過言では無い。処方箋の集中時間帯が午前や午後16時前後である薬局が多い中ではパート薬剤師の労働力は欠かせないものだが、夕方以降はその穴を正社員が埋める事になる。そのため正社員に負担が掛かり、いくら日中の時間帯に薬剤師が充足していても、時間外労働が発生してしまう事になる。

これには薬局薬剤師の雇用における特有の課題の存在が大きい。一般的な企業において、正社員の補助としてパートや契約社員雇用者の存在がある。身近な例としては、コンビニエンスストアでは夜間帯はアルバイトのみで営業している店舗も多い。またオフィス業務でも、派遣社員や契約社員が正社員業務の一端を担う事で、負担軽減に貢献する事に大きく繋がっている。もっともそれにはまた「派遣切り」「契約社員の待遇問題」など別の課題を生む土壌になっているが、正社員の長時間労働対策という面では極めて有用に働いている。

他方薬局においては「逆の現象」が起きており、特に夕方以降の時間帯を中心として「パート薬剤師の穴を正社員が埋める」という事が恒常的に発生している。これは個人経営で管理薬剤師を経営者が務めるケースにおいてはさして問題にならないが、中小以上のチェーン薬局においては容易には抜本的に対応するのが難しい問題となっている。もちろん、正社員を追加で配置すれば解決する事は自明ではあるが、その点は人件費からすると経営上非常に厳しいと言わざるを得ないだろう。

このように「営業時間」「雇用環境」を踏まえると、経営者、そして雇用される薬剤師にとって、長時間労働に対する対策というのは抜本的な対策がとりづらい課題に位置づけされ、また当該社員に対する啓発・啓蒙などでは決して解決しない。労働者にとって長時間労働は健康上の懸念、そして労働意欲を失するに充分な転職動機ともなりうる。

しかし抜本的な対策が難しいとは言え、労働基準法上の対応が必要となる。そのための対策としては、月間の残業時間を30時間未満とするよう、定期的に休日を付与する事が最も有用となろう。開局時間の短縮は不可能であっても、休日を取得する事は可能だからだ。もちろんここで差すのは有給休暇ではない。他の薬局から社員の派遣により対応することが可能だ。ただし週の労働時間が40時間を下回らないよう注意する事と、こうした対応を取る目的について、従業員の理解をしっかり得る必要がある事だけは付記しておく。