私が学生の時、同じ大学にリハビリテーション学科があった。作業療法や、言語聴覚について学ぶ学科。理学療法学専攻であれば、基本的には卒後、理学療法士に。もう20年の前の話。
そのころから「薬剤師はあと10年もすれば過剰になる」なんて言われてて、少々不安が芽生え始めていた時代。といっても、入学後にそんな事は知った。
伸びる資格だった理学療法士
一方で理学療法士はこれから伸びていく資格として、かなり脚光を浴びていた事はよく覚えている。当時あまり理学療法士という資格を知らなかったので、「薬学部じゃなくて理学療法士になればよかったな」とすら思った。
もちろんしっかりとした志があって薬学を学んでいれば、そんな考えにはなるはずが無いものの、私自身、受験の時は何となく薬学部に入ってしまった、っていう事もあるかもしれない。
その当時、理学療法士が伸びていく資格とされていたのは、はまだ資格者が少なかったから。1965年から理学療法士という資格は存在していたものの、それを学べる学校が少なかったのだ。
とっくに超高齢社会を迎えていた日本では、理学療法士というリハビリのプロが必要だったという事情があり、今後伸びていく資格とされていた。
そのため平成12年、これはちょうど私が大学生の時と重なっていたわけであるが、規制緩和で、養成校が乱立してしまう事となる。
【補足】
介護保険制度がスタートしたのも、平成12年4月。
ちなみに資格を取得するための養成学校数は激増したものの、いまでも大学卒業後の国家試験合格率は90%程度と高水準を維持し、毎年約1万人資格者が増えている。
平成12年当時、理学療法士の数は3万人弱。いま現在の有資格者数は、およそ16万人と5倍以上に(薬剤師のおよそ半分だが、年齢層はだいぶ若く働き手も多い)
厚生労働省資料:理学療法士・作業療法士の需給推計について(pdf.ファイル)
「伸びていく」はずであったはずの理学療法士という仕事。収入面で考えても、「薬剤師じゃなくて理学療法士の方がいいかな」って思っていたはずの資格。
理学療法士の平均年収
それが理学療法士の平均年収はまだ残念ながら、低い。誰のせいなのか。基本的には、介護保険が財源。
平均がどれほどかははっきりとしたデータは無いものの、ざっと以下のような感じ。
・ある求人サイトの正社員募集平均値では、368万円(→ただし、募集要項では下限の可能性があるので、もう少し高いと思われる)
・厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、406万円(31.8歳:勤続5.3年)
厚労省のデータの方が正確性が高そうなのでこちらを参考にしますが、学校を出て、数年働いて30歳過ぎて年収が400万円を越えるくらい。
20年前、理学療法士は将来伸びていく資格だと思っていた、これは私だけじゃなく、周り全体がそういう雰囲気だった。ただ「その20年後」の今、このような環境。
正直、厳しいと言わざるを得ない。
少子高齢化がますます進行中であった中、誰もが「仕事」として前途有望だと思っていた資格でさえ、学校の乱立、有資格者の飛躍的な伸びによって収入面では厳しい。
働く場所は多い。リハビリを必要としている人も多い。
訪問リハビリも以前より本当に普及した。1時間(3単位)で訪問リハを行ってるところもある。(老健なんかだとリハビリは20分くらい)
別にこれをもってして、理学療法士より薬剤師は恵まれてるなんて、そんな事を言ってるわけじゃなく、制度によって大きく働く環境は変化してしまう。
制度と言うのは、学校もあるし、保険制度(医療・介護)の問題もあるし、働く場所という事もある。
理学療法士も政治力が必要
理学療法士を取り巻く環境には「政治力が無い」のも一因かもしれない。
理学療法士で政治絡みの記事は無いかな?と調べてみると、すぐに不祥事のニュースしかでなかった。う~ん。
・「当選後、連盟へ3600万円」 参院選自民予定候補、17年に誓約書(東京新聞WEB)
2019年7月の参院選では、日本医師連盟支持候補よりも日本薬剤師連盟推薦候補が躍進した。4ヶ月前の事だ。
ただ「日本保険薬局協会」の支持者はまた別だったのでややこしいが、こちらは落選。もう少しまとまりませんかね・・。
参考:日本保険薬局政治連盟
なんとなく、少し政治熱が少し冷めたような気がしてます。応援はしましたし、投票もしましたけど。普段から応援しないと、声を届けないとだめ。何もしてなかったら、叱咤しないとダメ。
個人で声を上げても何も出来ないから、政治家を送り出した。
えらそうな事言ってるんじゃなく、自分に言い聞かせる。もう少し普段から政治に興味持たなくちゃダメ、そう自戒。一寸先は、闇なんですから。
薬局経営者だろうが、私のようなサラリーマン薬剤師だろうが、基本的には置かれている環境は同じ。
大学を卒業して20年くらい経った今、薬剤師と言う仕事はやりがいもあるし、良かったと思ってる。でもでも、ただ、運が良かっただけなのかもしれないな、とも思うわけです。
人生は結構、運である。