薬剤師と就職・転職活動

薬局開業し独立したい薬剤師が取るべき行動と失敗しないための注意点

ここ数年、独立して薬局を開業したい薬剤師が以前より増えているように思えます。その理由は色々あるかもしれませんが、薬学部が6年制となり学生のうちから薬局経営学を触れる機会が増えた事も一因としてあるでしょう。

また独立志向が増えた理由は言うまでもなく「雇用されている」立場より、自分で努力して成し遂げる「やりがい」という事も、重視されてきているのかもしれません。

もちろん、薬局を開業して成功すれば、いわゆる会社員薬剤師として手にしていた収入よりもずっと多くの年収を手にいれる可能性も増えます。

どうしても雇用されている立場であれば、年収に限って言ってもどんなに努力してもせいぜい年収1,000万円に届くかどうかという限界も見えますし、5年、10年と働く中で退屈な気分にもなってしまうものです。

近年では零売薬局など、これまでには極めて少数派であった形態の薬局も出てきており、独立開業への「面白さ」という側面が増しているように思えます。

本記事では「近い将来独立を考えたいと思っているけど、どう行動すればいいか分からない」「失敗・リスクを減らすためには」と考えている薬剤師に、少しでも役に立てるヒントを紹介したいと思います。

なお、本記事を書いている私は薬剤師として20年ほど働いていますが、自分自身は開業を考えていません。しかしいくつもの「薬局開業のお誘い」を受けてきました。

「開業したことも無く、事情が分からず何の参考にならないのでは?」というご指摘は当然ですが、それだからこそポジショントークのような物は一切ありません。

つまり、

  • これからの薬剤師は独立を積極的に考えよう!
  • これからの薬剤師は薬局開業しない方がいい

そういった自分の経験に基づく偏った意見を伝える事はしていません。

そのため体験談としてのリアリティには欠ける部分もあるかもしれませんが、客観的な視点をとして捉え、参考にして頂きたいと思います。

独立開業を目指す薬剤師が理解しておきたい薬局環境

すでに薬局を独立開業したいと考えている薬剤師なら、情報収集をある程度しているはずで、あまりこうした説明は不要かもしれません。しかし開業には、ゼロからテナントを借りて什器(調剤台・レセコン・分包機…)も用意してというケースと、既存の薬局を譲り受ける、大きく分け2つののケースがあります。

手持ち資金に大きなゆとりがあるならゼロから立ち上げるのも良いですが、銀行や信金からの借り入れ額が桁違いに増えてしまう大きなデメリットがあります。そういったリスクを避けるなら譲り受けてリノベーションという手段を取るケースが増えています。

薬局を取り巻く環境が大きく変化している中、まずは保険薬局の譲り受けやM&Aが盛んに行われている状況は理解しておく必要があるでしょう。そこで以下、薬局開業での2パターンについて説明します。

①個人薬局の後継者不足

保険薬局は大手チェーンの出店ばかり目立ちますが、依然としてそうした大手チェーンが占める比率は低い状況です。つまり個人経営の薬局が多いのです。これはドラッグストア業界とは大きく異る部分です。

個人薬局では、経営者の高齢化や特に地方での薬剤師不足により、事業継承を行うケースが以前より増えています。本来であれば「子に継がせる」という選択肢も、保険薬局ならではの慣習を知らなければ、開設者としての役割が果たせず、その後の運営がうまく行かないのも実情です。

もちろん「個人薬局を譲り渡したい」と思っている場合、それが十分な規模であれば知り合いの医薬品卸などを通じて大手チェーンに譲渡するというケースは比較的多く存在しますし、もしあなたが「自分の薬局を売りたい」のであれば、そのような方法がスムーズに行きそうです。

しかしながら、大手チェーンはその規模ゆえ、簡単には譲り受け出来ないという特殊な事情も存在します。それは十分利益が出ている個人薬局であったとしても、「大手チェーン」に属してしまうと様々な「縛り」が出てきてしまうためです。

これはつまり調剤報酬上の問題であり、特に調剤基本料の部分において「保険薬局グループ全体の処方箋受付回数」が影響してくるからです。つまり個人薬局の経営者が大手チェーン薬局に事業譲渡をしようと思っても、大手チェーン側にとってはあまりいい話とも言えない状況も存在するのです。

このような場合、例えば3薬局経営しているうちの1店舗のみの事業譲渡を行ったり、或いはそうした事情を知らないまま、不利な条件で薬局を事業譲渡したりしてしまう経営者がいるのが実情です。

「薬局を事業継承したい」と考えている経営者であるならば、その事業規模や薬局状況を十分鑑みた上で、出来るだけ双方(売る側・買う側)にメリットがある方法を取りたいものです。そうすることで単に「お金」だけではなく、気持ちの良い取り引きを行う事が出来るのです。

②大手チェーンから個人薬局に

上記とは逆のケースですが、大手チェーンから個人薬局へと事業継承するケースも近年目立ってきました。言うまでもなく、保険薬局やドラッグストアとも基本の経営方針は「出店攻勢」であるはずです。

しかながら、ここでもやはり「大手チェーンの規模」が足かせとなり、どうしても不採算店舗が出てきてしまいます。これは出店攻勢をしているからこそ生じてしまうデメリットと言えるのです。

こうした場合、大手チェーンでも既存の薬局を譲渡する、或いは薬局自体を閉局するという事を積極的に行う状況になっています。これは採算という部分はもちろんですが、薬剤師が不足している薬局への人的資源の集中という側面も存在します。

もし「薬局を事業譲渡してもらい開局したい」と考えた場合、大手チェーンから譲り受けたいと思う開局希望の薬剤師もいるかもしれません。その方が薬局としての「ハコ」が整っていると思えるからです。

しかし「個人」での取り引きは残念ながら難しく、ほぼ不可能であるのが実情です。対大手企業というのは一般的に譲渡する事は可能でも、逆の取り引きは行いづらいものです。

もちろん大手チェーン薬局が薬局譲渡を行うという流れがある限り、開局希望する個人へ譲渡するケースもあるでしょう。そうした場合は、専門のM&A会社を通してなど、かなり導入コストが掛かりやすい事は考慮しておかなければならないかもしれません。

メリット・デメリットを考えると、比較的小規模・コストを抑えて開業したい薬剤師であるならば、選択肢の優先度合いとしては低いものとなるでしょう。

薬局開業までは情報を収集する事が肝要

このように薬局譲渡という形で薬局を開業独立する薬剤師が増えています。もちろん土地探しなどゼロから薬局づくりを始めたい人も多いかもしれませんし、余裕があるなら多くの薬剤師がそうでしょう。

しかし立ち上げまでの時間・準備期間をどれほど取れるのか、コストをどれほど掛ける事が出来るのか、そういった部分を含め、相談出来る人に聞きながら準備をしていく事が大切です。それは言うまでもなく、事業として成功させるために欠かせない事なのです。

薬局開業のメリット

薬局を開業することのメリットについては、ここであまり詳しく述べる必要はないはずです。なぜなら「独立開業したい」と思ったことのある薬剤師であるならば、すでに多くのメリットは理想を理解している筈だからです。

とは言え、私が大手チェーン薬局のマネージャーあるため、そういった視点から「個人で薬局経営する事」のメリットを挙げてみます。これは「若い薬剤師の理想」とは違い、私自身振り返ってみて、薬局を開業すれば良かったなと思える部分でもあります。

開業で自分の理想とする薬局づくり

チェーン薬局であると、大手は言うまでもなく、中小規模でもどうしても「自分のやりたい事を意識した薬局づくり」というのは難しくなってきます。薬局のPOPひとつとっても指示されたものを使う、OTCの推奨品が決まっているなど、細かなルールは存在するものです。

もちろんあなたが薬局を開業し、いずれは複数店チェーン化していく事が出来たならば事業として大きな成功ですが、そうなると逆にルール化はしていかないとならない部分が増えてくるので、これは仕方の無い部分かもしれません。

自分で薬局を開業独立して、自分の色を出し、魅力的な薬局づくり、運営を行っていく事はとても魅力です。それは1店舗~数店舗という小規模だからこそ実現できる事かもしれませんね。

収入の大幅増も

会社員として雇用されている薬剤師では得ることが出来ない年収を得る事が出来るのも大きな魅力のひとつでしょう。会社員薬剤師、つまり薬局やドラッグストアで来ようされ働いているのであれば、どんなに昇進しても薬局では年収がせいぜい1,000万程度。大手製薬企業であったとしても1,500万円というところでしょう。

収入(役員報酬)という部分については、一概に「処方箋を1日30枚受け付けたらいくら」のように言えないのが難しい所です。薬局を個人で新規開業すれば幾ら儲けられますよ、などとは言えないないのです。むしろ、そういった甘い言葉を巧みに使い開業支援を申し出てくる人がいる場合は注意で、シミュレーションが大切となってきます。

また、幸いにも非常に多くの患者さんから利用してもらえる薬局へと成長すれば、新たに人を雇い入れる必要も出てきます。ただこれに関しても、事業の成長を喜ばしく思う薬剤師もいれば、逆に自分の手の届く範囲で患者さんのために貢献したいと思う人もいるでしょう。

以上のような理由から、新規薬局開業による典型的な成功の青写真というものは絵描きづらい事となるのですが、これに関しては「既存の薬局を譲渡してもらう」という方法を取れば、ある程度シュミレーションしやすくなるのが特徴です。

既存薬局の譲渡という形であれば、月の処方箋受付回数の見込み、後発品への変えやすさ、集中率などおおよそのデータが揃った状態でスタート出来ます。「ゼロからの開局」では無いものの、リスクを大きく抑えられる事が最大のメリットとなります。

薬局開業のデメリット

デメリットもメリットと同様、すでに薬局を開業したいと思っている薬剤師であれば、すでにある程度把握しているはずです。薬局に限らず「起業」には失敗するリスクが存在するので、そういった部分を受け止めながら開局準備や情報収集を行う事が大切です。

事業として失敗のリスク

借り入れをして薬局を開業したけれど、処方箋枚数が全く増えずに廃業してしまう事になる。事業を行うのであれば、避けられないリスクですし、相当程度そういった自体を想定して足を踏み込まなければならない部分かもしれません。

しかし「処方箋」は、発行する医師があり成り立っています。いわゆる面調剤では処方箋を獲得していくまでには時間がかなり掛かるものですが、立地を始めとして、医療機関と上手に連携できれば問題の大部分が解決します。

医師とマンツーマンで薬局を開業するにせよ、既存の薬局を譲渡してもらい開業するという形で始めるにせよ、この2つの方法は「処方箋が来ない」という一番のリスクを最小限に抑える事が可能です。

なお補足するまでもありませんが、何の計画も無しに「安いが立地の悪い土地」を借りて薬局を新規で建てたとしても、その薬局に処方箋が安定して舞い込む可能性はほぼゼロです。薬剤師の人柄だけで経営が上手くいく事は、まずあり得ません。ある程度の良い立地ありきで、そこから発展し、個人経営の強みを生かした薬局の差別化を図る事が出来るのです。

責任は「社長」であるあなたが追う

会社員という雇われた立場であれば、どうしても窮地に陥ったとしても、重大な瑕疵がない限り、会社があなたを守ってくれます。それは雇用=収入をはじめとした社会的な立場です。

自分ひとりで薬局を開業しリスクを負う分には、万が一経営がうまく行かなくなっても、自分だけの損害で済みます。しかし従業員を雇えば雇用主としての責任も生まれますし、毎月しっかり賃金を支払っていかなければなりません。

もっとも、これまで薬剤師として薬局で働いてきた経験があるならば、その他のリスクはかなり低いはずです。薬局開設者として行わなければならないことは、保険薬局で管理薬剤師経験があれば把握しているからです。

また、薬局を開業するのであれば地域の薬剤師会へは会員登録するでしょうし、分からない事はすぐに聞くことが出来るという横のつながりを大切にする事が、あなたを守る事にもつながります。

なお、薬剤師会の会員費が高いからといって加入しない事は、いくらあなたに「自信」があったとしても避けたほうが無難です。もしあなたが大手チェーン薬局で働いていた場合、もしかすると薬剤師会に加入していなかったケースもあるかもしれません。その是非はともかく、薬剤師会は個人経営の薬局で強いパイプを持つのでおろそかにしないようにしたいものです。

初心者からの開業準備を整える方法

ネットで検索するだけでも数多くの情報を手に入れる事が出来ます。開局までどのように準備をすればよいか、どれほど費用が掛かるか、医師との関係づくりはどうするかなど、様々な事が必要になってきます。

これは状況によって大きく変わってくる部分もあるので、「地域にあった」情報収集心がけたいものですし、そのために薬剤師会などで活動する事もおすすめです。

なお、零売薬局を開局したいという薬剤師もいるかもしれませんが、よほど敏腕な方で無い限りは難しいと考えたほうがよいでしょう。なぜなら、薬剤師会には属しづらく、そのため大手医薬品卸との取引もまず難しいからです。ほぼ薬価差益など望めません。ネットではなく足で自分で情報を集められる力、人一倍のバイタリティーや誰にも負けない努力をする事が出来るのでなければ、おすすめしません。それだけ難しい分野です。

まずは情報をしっかり集める事が全て

薬局開業に向けて大切なのは情報収集です。当たり前と思うかもしれませんが、ネットで済まそうという考えではそもそも誤りです。クリニックなど独立を考えている医師に合わせて開局したいと思っていても、PCやスマホを眺めているだけでは全く情報など入ってくるはずがありません。

とは言え「どうやって情報収集をしたらいいのか」が一番の悩みの種である事は間違いありません。そこで以下、どのように薬局開業に向けて準備をすればよいか、情報収集すればよいか一例を紹介します。

薬局譲渡の仲介会社

この記事で先に触れたように、今は個人薬局が後継者不在により薬局を手放すパターンが増えています。そうした仲介をしてくれる会社に依頼すれば、自分に合った薬局を見つける事が可能です。

デメリットとしては仲介手数料が必要(薬局の規模に応じる)になってくる事ですが、それに相反するメリットとして既存の薬局を譲り受ける事で開局時のリスクを大きく軽減させる事が可能です。

もちろん「新しい建物・什器で」と考える薬剤師には不向きかもしれませんが、そこは予算の許す範囲でリノベーションしていけば問題ないはずです。

建物もレセコンも分包機もすべて新品であれば気持ちが良いものですが、使う機会がなければ負債となります。ゼロから開局したものの半年間処方箋が10枚以下では事業存続があやぶまれてしまいます。

そのため、そうした薬局譲渡の仲介会社を利用する事は、リスクを避けつつ自分自身で薬局を作り上げる事が出来るには、比較的おすすめ出来る方法と言えます。なお、仲介手数料は会社によって大きな差があることには注意が必要です。

独立支援を行う薬局へ転職

薬剤師の独立支援を行ってくれるチェーン薬局に就職する事は、まだあまりリスクを取りたくない薬剤師にとっては最善の選択です。勉強するうちに「やっぱり開局は諦めよう」と思う事もあるかもしれませんし、それはそういった選択が出来るという強みです。

「将来独立したいと思ってるけど具体的には行動出来ずに迷っている」なら、そうした独立支援を行ってくれる薬局へ転職する事は、働きながら給料を得つつ学べるので比較的人気のある方法です。

大きな注意点としては、独立支援をうたいつつも「全く独立させてくれない」薬局が存在する事です。つまり独立志向のあるような優秀な薬剤師を採用するためにだけ、そうした標榜をしているケースです。

これは確かに不条理な事であるものの「2年程度で辞める薬剤師」を積極的に採用してくれる薬局もまた、おかしいとも思えるはずです。そのためまず大切な事は、転職サイト経由などでの面接の際に、その独立支援をしてくれる薬局の社長や面接担当者に、過去どれほどの薬剤師が独立したか聞くことを確認するようにしましょう。

上記のような求人は多く出ているので、実際はどうなのか「マイナビ薬剤師」経由で聞いてみるのが早く、こうした求人が身近にあるか相談などもちろん無料ですから、使わないのはデメリットです。

ちなみに私が以前勤めていた小規模チェーン薬局では、特に独立支援などはうたっていませんでしたが、実際は独立する薬剤師が多く社長も支援を行っていました。もちろんフランチャイズ形式などではありません。そうした薬局も存在するので、転職サイトの担当者などにしっかり確認してもらうようにしましょう。もちろん最終確認は面接の場でする事が大切です。

コネクション

人とのコネクションは薬局開業の際の大きな情報源かつ、信頼性の高いものの一つです。知り合いに医師が「新規開業を考えている」と話してくれれば現実性の高いものですし(ただし診療科によっては注意)。また医薬品卸MSやMRからの情報、薬局経営者からの情報、薬剤師会での情報、様々あります。

どれも非常に有用な情報ですが、こうった情報は急に出てくることも多いので注意が必要です。私も経験があるのですが、MRから「○○医院が処方箋を院外に出したがっている」という情報を貰った事があるのですが、その時は薬局開局など全く考えておらず何も行動出来なかったという事がありました。

コネクションによる情報は非常に有益なものが多いのですが、それまでに準備が出来ているかも大事ですし、何より「何も情報が入らなくて何年も経ってしまった・・」という事にもなりかねない事に留意しましょう。どちらかというと受動的な情報収集ですので、「薬局を開業する」と思い立っているのであれば、かなり非効率的な手段にもなりうる可能性に注意が必要です。

薬剤師の薬局開業への道のり【まとめ】

薬剤師として薬局を開業したい、そのためには情報収集は言うまでもなく、適切な支援を受ける事も大切になってきます。そうすることで、時間というロスを少なくする事が出来るのです。

また、リスクをどれだけとれるかという部分も大きな要素になってきます。極力薬局開業のリスクを少なくしたいのであれば、既存薬局の譲渡を受ける方法も積極的に検討する事が大切です。

そうした相談を請け負ってくれる会社(薬局のM&Aの仲介会社選び)もまた、比較的に手数料が少なく、相談にもしっかり乗ってくれる会社を選ぶようにしたいものです。