医療機関では、患者さんからのクレームというものはとても多い。
当然、健康や命に関わる仕事ですから、神経質になるもの分かります。自分の立場に置き換えれば、気持ちが分かる部分もあります。
少しの間違いであってもやれ「保健所に言ってやる」やら「訴える」などそれほど珍しい事でもありません。
ただそういったクレームとは別に、どうでもいい事でもなんかいちいちクレームをつける患者さん、なんとかならないのでしょうか。
医師の不満を薬局でぶつける
医師への不満のはけ口のケースは割と多い。
お薬について説明しようとすると、処方内容に不満をおっしゃる方が、しばしばいらっしゃいます。
「薬が変わるなんて聞いてない」「あの医者は効かない薬ばかり出す」「こんな薬はいらない」などなど。
薬剤師としては、もしかすると処方内容に間違いがあるかもしれない可能性を考えれば、(たいていは大した処方内容じゃなくとも)疑義紹介する義務があるわけです。
しかし「じゃぁ先生に確認してみますね」なんて言うと「そんな必要はない!」「あんな医者に言っても無駄だ!」と怒り始める始末です。こりゃどうしたものか。
結局何に怒っているのか分かりづらい
たいていこういう患者さんはかなり話が長かったり、あげく国の制度の悪さについて語りだしちゃったりするわけで、まぁそういった中でも症状を伺っていくと、処方されている薬はどうも問題なさそうなのです。
どういう心境なのか分からないのですが、病院やクリニックの不満を薬剤師へ対象をすり替えてクレームを述べてきます。
忙しい中、他にも患者さんお待ちなのに、服薬指導とは関係ないところで長話しをされるのはつらいもの。しかもやや医療についての話なので、こちらとしてはひとまず、うなずくしかない状況が続きます。
何に怒っているのかよく分からないまま、こちらも何となく「申し訳ありません」と謝ってしまったり、もうよく分からなくなってくるのですが、まぁ話が一方的なので、あんまり怒りが収まるようすもありません。
そして最後のセリフ「もうこんな薬局には二度と来ないからな!」
薬局に患者さんがいらっしゃるその理由
二度と来ない、事は無い。ほとんどそうです。
クレーマー患者さんからの「二度と来ない!」その言葉に少しの安堵を覚えつつも、そのしばしば聞くセリフに、次の瞬間ふと頭をよぎるわけです。
「またいらっしゃるのかな」と。そしてその予感はまず間違いなく的中する事となります。
毎回毎回、クレーム。いや、単なるクレーマーなのですが、そういった患者さんほど、次回も律儀にいらして頂くことになります。
そして毎度のようにお叱りを受けるわけです。
処方元も変わっていません(医師や医療機関のクレームを言う割には、得てして、医療機関を変える事もありません)。
きっと患者さんは薬局に満足している
薬局はたくさんあります。私の勤務する薬局だって、徒歩10分圏内に10薬局はあります。選択肢は非常に多いのです。
ですが、二度と来ないという決意表明をしてくださったとしても、またいらっしゃる。何故か。もうこれは結論としては1つしか無いのです。
その薬局が好きなのです。
その薬局の対応になんだかんだ患者さんは満足しているのです。
長話しを聞いて、薬剤師は頭を下げて、しかしそれでも服薬指導をして、お大事にと。きっと他の薬局では冷たくされてしまったのかもしれません。
先日もいらっしゃいました、二度と来ないと何回か言っていた、いつものクレーマー患者さんが。
今回もやっぱりひとしきり、対応の悪さなども指摘され、頭を下げたり謝っちゃったりする事となりました。なぜか厚労省の社会保障制度の方針についてさえ、誤ってしまいました。
長い話も終わり、はぁ、ようやく帰りそうかな、と思った時、突然の「余っていたからやるよ」と出てきた菓子折り。
どう見ても、余るような感じのものでも無い、少し高めのお菓子です。あぁ、もうなんだか良くわかりません。ツンデレにも程があります。好きか嫌いかはっきりしてよと。
ここまでその患者さん像、特に老若男女を記載していません。でもおそらく、70歳前後の男性、そうイメージしていたみなさん、多いのではないでしょうか。
仕事一筋、会社でそれなりの役職に就き部下からはペコペコされていても、定年したらただの人です。何十通来ていた年賀状も来なくなるでしょう。
家庭に帰っても、話す相手も今更いないのではないのかな・・。
・・なんていう一抹の寂しさを勝手な想像でめぐらせるわけなんですが、薬局スタッフからいつも言われるのです。
「あなたも将来必ずああいう患者さんになるね!」と。
そりゃあんまりだ、ひどいなぁ!と思いつつ感じるわけです「・・う~ん、そうかもなぁ。」
と思いつつ、「もう来ない!」とおっしゃった患者さんが来局されるのをなんとなく待っています。
だってもし本当に来なくなったら、「お身体大丈夫かな?」なんてちょっと心配になってしまうんですから。
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