少し前までは、ドラッグストアと薬局をごちゃまぜにして「薬局」と呼ばれると、「ドラッグストアは薬局じゃなくて薬店だよ」と思っていたもの。
ただ調剤併設店が増えてきている現在、ドラッグストアを薬局と呼んでも違和感が無くなってきている事はちょっと面白い事だなと感じています。
そもそも「薬店」という表現も、一昔前はCMなどでよく使われていましたが、最近は「ドラッグストア」という表現に変わってきていますよね。
「薬剤師に相談」という表現もまた、「登録販売者に相談」と並んで文字表記されるだけになってきました。これも時代の流れなんでしょう。
さて、零売薬局について個人的に書いてみた記事なんですが、あくまで個人の思ったところを書いています。
「零売薬局って何」っていう素朴な疑問を持ってる方は、東京でご活躍されているオオギ薬局さんのホームページを実際に見た方が早いです。
どういった取り組みをされてるとか、そもそも零売薬局ってどういう形態の薬局なのかとか、とてもよく分かりますよ!
薬のテレビCMの最後の「ポンピーン」などの注意喚起の音声も、最近はちょっと緩和されてきている事にお気づきでしょうか。規制緩和は知らないところで、少しずつ少しずつ、進んでいます。
・・少し話がずれてしまいましたが、「薬局」も、
- 調剤薬局
- 保険薬局
- 保険調剤薬局
などなど、なんだか言い方が統一していないと感じています。正式には「保険薬局」です。
といっても、薬局のネーミングで、「いろはに調剤薬局」という名前の付け方はあっても、「いろはに保険薬局」というのはほとんど見掛けませんよね。
「調剤薬局」というのは俗語に近いのですが、一般的には分かりやすい表現なのかもしれませんし、私もこのブログでは調剤薬局と保険薬局を併記して使用しています。
しかし薬局=保険薬局と言えるか、つまり処方箋に基づいて調剤を行っているかというと、そうではありません。「保険薬局」ではない、「薬局」というものについて触れてみたいと思います。零売薬局です。
零売薬局とは何か?
まず「零売」という意味ですが、医療用医薬品を処方箋なしに、必要量だけ患者さん等に販売することです。
処方箋医薬品は、零売することはできません。ただし災害時等、例外は有りです。
参考:薬食発0318第4号厚生労働省医薬食品局長通知(pdf.ファイルが開きます)
零売は、医薬品医療機器法において、特例的な位置付けとされていますが、それに特化した薬局が、零売薬局です。
そんな薬局見たことないな、と思うかもしれませんが、それも当然のことで、全国で10軒弱しかありません。私自身も利用をした事がありません。
しかしこの数の少なさは、昔はあったけど今は廃れた、という理由では無く、むしろ全国的に少しずつではありますが、増えている、認知度は上がっているのです。
零売の法律的な位置づけは
以前はよく処方箋医薬品でない医療用医薬品を販売しているドラッグストアを見掛けましたが、最近はあまりありませんね。
それは「薬剤師がいるから売れる」のではなく、「薬剤師の指導に基づき販売」できるような体制がしっかり整わなければ販売してはいけない、という厚生労働省の趣旨があるからです。
そのため、零売を行うに当たっては、以下を遵守する事が求められます。
参考:薬食発第0330016号(厚生労働省通知 pdf.ファイルが開きます)
この通知内では、販売ルールを明確にしており、「やむを得ず販売を行わなければならない場合などにおいては、必要な受診勧奨を行った上で」
- 必要最低限の数量に限定
- 調剤室での保管(※ドラッグストアで手に取れる状況はダメ)
- 販売品目、販売日、販売数量ならびに患者の氏名および連絡先など、販売記録の作成
- 薬歴管理の実施(※ドラッグストアなどで売りっぱなしはダメ)
- 薬局において、薬剤師が対面により販売をする
とまぁ、別に保険薬局が明日から零売を始めること自体はとても簡単なのですが、取り扱う事自体、しっかりとした管理体制が必要なのです。片手間には出来ません。
また当然のことながら患者さんは自費(非保険扱い)で薬を購入する事になりますし、それを専業としている零売薬局としても「保険収入」が無いわけですから、甘い商売ではありません。むしろ大変です。
そもそも零売薬局という業態が、ムラ社会の薬局業界で弾圧を受けずにやっていけるのか、薬はどこの卸売業者から仕入れるのか、そういった最初の段階から苦労がある訳です。
ちなみにお気づきかと思いますが、薬局の事務スタッフなどに上記を実施しないで医療用医薬品、ましてや処方箋医薬品を薬価で販売する事はNGです。
そういうリスクマネジメントが非常に緩い薬局がありますから注意が必要です。
しかもこれを福利厚生の一環だと思っているチェーン薬局の社員がいる事に驚きですし、もしそうならば転職も考慮に入れる事をおススメします。
非常識が常識になる時代も
さて、名前すら聞いた事がない薬剤師も多いであろう、零売薬局について簡単にご紹介しましたが、保険調剤を行っていないという極めて特殊な薬局です。
しかし、社会保障費が増大していく中で、この「零売」という役割がもしかしたら今後、薬局薬剤師に求められる日がやってくるかもしれません。
保険適用外になる医薬品が出る可能性も
もしも湿布が保険適用から外れたら、もしも漢方薬が保険適用から外れたら、それは保険薬局が零売という形で取り扱うことになるかもしれません。
OTCによるセルフメディケーションがなかなか進まない中、保険薬局で薬剤師に相談のできる、セミ・セルフメディケーションが推奨される可能性は十分考えられると思うのです。
制度はどんどん変わります。ジェネリック医薬品をわざわざ疑義紹介で変更していたのは、それほど前の事ではないのです。
健康サポート薬局というものの位置づけがいまだ曖昧な中(定義は曖昧ではありませんが、保険薬局が取り組む意義が見えづらいという側面)、また違ったアプローチで薬剤師の役割も変化していくのかもしれません。
零売薬局が担う役割、それはこれからの保険薬局のあり方へ参考にしてみる必要がありそうです。
全国の零売薬局(2019年3月)
・オオギ薬局(千代田区内神田2-8-8)
http://ogiyakkyoku.com/
・池袋セルフメディケーション(豊島区東池袋1-45-5A)
http://www.self-medication.co.jp/
・アリス薬局(大阪中央区北久宝寺2-4-14)
https://aliceyakkyoku.com/
・レディーファーマシー(大阪市中央区安土町3-2-15)
https://www.ladypharmacy.com/q-a
・薬局アットマーク(新潟市中央区米山5-11-22)
https://www.attomark.com/
・くすりやカホン(札幌市東区北22条東15丁目4-20)
http://kusuriya-cajon.com/
・かすみ園薬局(函館市柏木町10-6)
http://www.kasumien.co.jp/