薬剤師と就職・転職活動

薬剤師がヘッドハンティングで転職する裏事情

もう、5年ほど前になるでしょうか。薬局に1本の電話が掛かってきました。

はじめの挨拶がいかにも営業っぽかったので、またマンション投資の電話か?と思いつつも少し話を聞いてみました。

薬剤師ヘッドハンティング会社は実在するのか

『弊社は〇〇という会社でして、ヘッドハンティングを担当している××という者です。先生、お忙しい中申し訳ありませんが、今少しお時間よろしいでしょうか。』

めっちゃうさんくさいやん・・そう思ったと同時に、日中で患者さんがいらした状況でしたので、ひとまず会社名だけメモり、「19時以降またお電話頂けますか」と伝えていったん切りました。

怪しげながらも無視できなかったのは、そういった電話が初めてで、正直興味がそそられたからです。

だってヘッドハンティングだなんて、テレビの世界の事かと思っていましたから。実在すら怪しいもんだと思っていました。

その会社はあやしく無いのか?

少し浮かれながらも、初めての状況。

ある程度は初めの電話の段階で、話を聞く事もできた状況でしたが、いったん話を切ったのは、おっしゃっていた会社がそもそも実在するのか、ちゃんとした会社なのかを調べるためでした。

もし架空の会社であって、その事も知らずにノコノコと会いに行き、単身用マンション投資営業ならまだしも、数人に囲われて何かに勧誘されるなんて事になれば、とんだ災難です。

そこでネットでその会社名を検索してみる事にしました。

「うーむ、ちゃんとした会社だ・・・」

その会社ホームページを見ると、結構な規模の会社であり、またヘッドハンティング専門の会社という事も分かりました。

「はなし、聞いてみたいなぁ」

薬剤師A(私)、ヘッドハント話を聞きに行く

ぴったり19時、再度電話が掛かってきました。まぁその場では向こうも詳細は言いません。

『A先生を必要としている会社があり、お話を聞いて頂きたいと考えています』程度です。
(ちなみに初めから名指しでしたが、少なくとも都内では、管理薬剤師の薬局情報が公開されているのでそれは大した点ではありません)

必死の営業、つまり“お願いです、話し聞いてください感”も無く、まぁどんなもんだろうと、日時と場所を決め、話しを聞く事にしました。数日後の業務後、19時から会う約束となりました。

膨らむ妄想

私、結構バカです。

ヘッドハントなどという未知との遭遇、しかもそこはちゃんとした会社、周りでそんな話を聞いたこともない、ちょっと期待しちゃったのです。どんな話が待ち構えているのか、かなり妄想が膨らみます。

『A先生、この会社のこのポストをお願いしたいのです、年収2,000万です。・・少ないでしょうか。』

なんて事になったら!

※この妄想期間が一番楽しいです

あぁ、やっぱりこうして幾つもの豊富な会社経験であったり(※ほんとは転々しただけ)、今の会社でも多くの経験積んだりしているからこそ、きっとそれが風のうわさとなり、ヘッドハンターに目をつけられたのだなと。

もしかしたら、誰か私の事を知っている者が、陰からその会社に推薦したのかとすら、思いましたよ。いやぁー、頑張っているといい事あるもんだね、と。

駅前のジョナサンで待ち合わせ

秋の風が、頬に少し冷さを感じさせ、それは冬の訪れを告げようとしていました。

11月ある日の19時ちょうど。駅前のジョナサンで待ち合わせ。

いつものテーブルの向かいには、赤いチェックのストールを巻いた君。・・・ではなく、俺より若い兄ちゃんでした。

うーん、年下かぁ・・。一気にテンション下がる。

“やり手”っていう感じじゃなく、「社会人5年目です。もっと色んなクライアント様にお役に立てるよう頑張ります!」って感じです。30歳くらいかな、まぁ仕方ない。

まずはこちらの説明

こういうの、ガチのヘッドハンティングだったら経歴が調べ上げられているもんですが、まぁどうやら名前と今の勤め先くらいしか情報が無いようです。

それゆえ、これまでの経歴であったり、今の立場、携わっていることなどを伝えます。むむ、これじゃぁ、今この場で履歴書を書いてるようなもんじゃないか。

なんじゃいそりゃ!トホホ・・

まぁ一通りこちらの情報をお伝えし(向こうも変な人じゃないか、確認の意味合いもあるでしょう)、そしてここから本題に入る事となります。

意外と薬局薬剤師にとっていい案件だった

それでは向こうのターンという事で、1つの案件が紹介されました。

『東京都の○○地域と埼玉県の△△に展開する、約30薬局ほどのチェーン調剤です。これからさらに事業拡大するにあたり、A様のような優れた人材に、エリアを統括する役割を担って頂きたいと、先方の社長からのご依頼です』と。

おっつ!意外とまともな話しでした。

「社長~、それなら直接声掛けてくださいよ~!」という疑問はさておき、当時は単なる1薬局の店長でしたので、昇格をともなう転職という事になります。

エリアを統括って、なんかエリアマネージャーみたいのかな。それを外部から招へいとは凄いね。と思いつつ、もう少し事業内容等聞いていきました。

この時点では具体的な会社名はなし

色々とこちらも質問点を伺いつつも、この時点では、その会社が具体的にどこにあり、そしてどこに薬局があるのかという情報は無しです。つまり社名非公開です。それは一般的な話しです。

きっとここで私が興味を持ち「直接面接をさせて頂きたい」となれば、詳細を聞く事が出来るのでしょう。

とは言え、<30薬局程で、東京と埼玉のどこどこ>という情報は聞いたので、ちょっと席を立った時にスマホで調べたら、すぐに社名は分かりましたけれどね。

ついに、待遇面の具体的な話を聞く

まぁね、やはりこれ次第という所があります。さぁさ兄ちゃん、いや兄様、聞かせておくれ!

いやね、薬局でしたら年収2,000万とは言いませんよ。まぁでもこんなヘッドハンドなんてするくらいだから、まぁそれなりに期待も膨らむのです。年俸300%アップみたいな感じになるのだろうか!?そわそわしてしまいます。

兄様『具体的な年収ですが、詳細はこれからですが約700万円です。如何でしょうか。』

私「・・・」

兄様『ちなみにA先生、差支えなければ今のご年収はどれほどでしょう』

私「そうですね・・・850くらいです」

兄様『・・・』

きっとこのお兄さんは、私の年収はおそらく500万円台というところを予想していたのでしょうか・・。転職を繰り返している私は、結構な年収を手にしていました。

しばらく続く、なんとなくの気まずさの中、『今回の件もぜひご検討ください。また案件があったらお持ちいたしますのでよろしくお願いします』と、そこからはあっさりと話も終了してしまいました。

なんじゃいこりゃ!時間の無駄じゃないか!

なぜ、薬局の薬剤師をヘッドハンティングしたか

普通、薬剤師が転職するとしたら、おそらくは複数の人材紹介会社に登録し、そこで世話をみてもらって転職活動を行います。

すると現在の薬剤師不足の中、どうなるでしょうか。

薬剤師の奪い合い

私が働く会社でも求人を掛けるわけなんですが、まぁなんと言うんでしょう、よさそうな薬剤師を人材紹介会社から紹介頂いた場合、5社、6社での奪い合いは当たり前です。

まぁ一概に年収の高いところに入社に至る訳ではないですが、どうしても最後はお金勝負という部分が生じてきます。

お金は抜きにしても、転職市場に出てきた優良薬剤師を獲得するのは、倍率が高く、至難の状況なのです。

そこでヘッドハントをするという意味が生まれる

転職市場に出てきた薬剤師は、当たり前ですが、次の就職先をすでに探している状況です。

しかし私が経験したように“ヘッドハント”という形である事は、転職市場に出る前の、競争率がゼロの薬剤師を一本釣りできる可能性があるという事です。やり口はうまいですね。

いまの職場に100%満足して働いている人なんて、薬剤師を抜きにしたって少ないでしょう。

誰だって少なからず、職場環境や、年収の不満などをもって働いています。そんな方に声を掛ける。

つまり、“転職したいなと、何となく思っている”薬剤師に声を掛け、行動に移させるという事なのです。

つまり、人材紹介会社とほぼ同じ

個人が能動的に行動を起こすか、それとも向こう側からアクションをとるか、その差だけであって、私が経験した感じからすると、人材紹介会社とやる事は同じという事です。

それだったら、自分から複数の薬剤師人材紹介会社に登録し、色々話を聞く方がいいと感じます。

だって薬剤師の人材紹介会社の方が、ヘッドハント会社よりもずっと案件は多いのです。私も転職転職で、結局年収がアップしてきたわけですしね。

そもそも今回はたまたま年収で折り合いがつきませんでしたが、年収に満足できれば「いや、千葉で働きたくて」となったらすぐ違う求人案件をもってくるはずです。

ヘッドハンティングなんていう、ちょっと心踊らされるような言葉にはご用心!

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