さて今回は「逆ザヤ医薬品って何?」という薬剤師もいるかもしれず、簡単に説明を。
売値 > 買値
となる医薬品です。
保険薬局で言えば「売値=薬価」と同じなので、買値が薬価よりも高くなってしまう医薬品の事を逆ザヤ医薬品と言います。
えっ?そんなことってあるの?と思う薬剤師もいるかもしれませんが、これが割と普通にあります。
特定保険医療材料などは詳しく無いので分かりませんが、有名どころだと、プロペトや酸化マグネシウムなどが該当します。
確かにそうなんです。ただ「価格の逆転」現象が起きないのは、バラ包装品での話。
つまり、酸化マグネシウムの500g製品、プロペトの500gボトルなんかではこんな「逆ザヤ」という事にはなりません。もっと小包装品(個包装品)で、このような事が起きてしまいます。
・酸化マグネシウムの分包品(0.5g包など各種)
・プロペトの100gチューブ
考えてみれば当然なことかもしれませんが、酸カマもプロペトも薬価は安いです。それを小包装にしてしまうと、「包装代」が上乗せされてしまうんですね。
製薬メーカーとしても製造するのに時間もお金も掛かってしまう。それなので、単純に製品として価格が高くなっているのです。
(ただし、メーカーとしてもそれで儲けようとしている訳ではない)
だから、単純に考えれば酸カマもプロペトも、大包装から小分けして調整した方が「損」はありません。
とは言え、カマをいちいち分包するのって手間で少しの時間が必要です。プロペトだって処方量によるけど、100gならば詰めずにチューブ製品をポンと渡した方が時間効率は良いですよね。
この辺は、「どれだけ調剤量が多いか」でも測る必要がありそうです。結局大包装から小分けするにしたって、人の手が掛かるようではその方が経費(人件費)も手間も掛かります。
ただ注意したいのは、プロペトの場合は患者さんの利便性も考慮した上で交付を考えたいところです。つまり、軟膏として「チューブがいいか」「軟膏壺がいいか」を薬剤師としては少し考えて欲しい所。
先日以下の本を読みました。これは「全薬剤師におすすめしたい」と思える名著です。特に私のように「これまで皮膚科門前薬局で働いたことが無い」ならば、一度は目を通して欲しい内容が満載です。
本の内容をここでネタバレする訳には行かないんですが、大切な事としては、軟膏壺では結構な割合で雑菌が繁殖するケースがあると言うこと。
プロペトなども、(アトピーの患者さんに限らずですが)基本的には「手で軟膏壺から取る」ような事は避けた方がいいという事です。
これはどんな外用剤にも当てはまりますよね。軟膏壺から塗布するのであれば、ヘラなどを使って手に取るのがベストですが、チューブ製品であればその手間を患者さん(やご家族)に掛けさせてしまう事もありません。
逆ザヤ医薬品なんて、出来れば薬局で取り扱いたくないものです。薬価差益が縮小するなか、「売れば売るほど損が出る」のではもともこもありません。
酸化マグネシウム製剤も83%の分包品に関しては、薬価も高く、逆ザヤ医薬品では無いものの、どうもいまいち普及しているとは言い難い状態です。
(マンツーマンでやっているのであれば医療機関に提案出来るはず)
もちろん患者さんの負担金は増えてしまうし、酸化マグネシウムが「かさ増し」されているので、少しレモン風味などが付いていたとしても、どうしても飲みづらさが生じてしまいます。それは83%カマ製剤の大きなデメリットかもしれませんね。
「逆ザヤ医薬品?何それ?」とならないよう、頭の片隅に入れて置きたいところです。