「この薬、どうしてそんな名前なのかな?」薬の名前に対する疑問っていうのは、昔から謎が多いものです。
戦前のOTCとかって、胃腸薬でも「特攻錠」とかそんなのばかりでしたからね。
医療用医薬品の名前の由来、いちいち調べない人が大半だと思います。ただ今は割とMRさんが説明してくれるので、話半分に「なるほど」とか思ったりします。
もちろん、OTCであれば「ネーミング次第で大きく売り上げを左右」します。
この記事では、医療用医薬品について少し調べてみました。主に「強力」についてです。
薬の名前、たぶん結構名づけるの大変
「苦労して生み出した薬だ!さぁ名前をつけよう!・・・う~ん、難しい」
何年、いや十何年、それ以上かけ、巨額な資金を投じて世に送り出される薬、それに名前を付ける事。それがいかに胃が痛くなる事なのか想像は容易じゃありません。
同列に語るのはおかしいかもしれないけど、親が我が子に名前を付けるのだって、何冊も名前辞典を買ってきて何か月も思案して名づけるんです。画数まで気にして。
我が子に名前を付ける事と、薬に名前を付けることの決定的な違い。それは、子供の名前は唯一無二のものである必要は無いですが、薬に関しては重複する事はできません。
何なら似た名前ですらダメ。取り違えの問題があるからですよね。
「ネーミングどうしよう」名付けるのに悩んでどうしようもなく、ダジャレ。それもうね、仕方ないと思います。それっぽく付ければいいのかなと。
よっぽど変な名前じゃない限り、あんまり気にする人はいませんよね。覚えにくい医薬品名の方がよっぽど迷惑。
薬の名前を付けのは大変です。ダジャレに走るのも仕方なく、MRさんが説明する名前の由来がくだらないと思っても、見逃してあげましょう。説明する側だって思ってるはずです。
インタビューフォームに名前の由来あり(※ダジャレ除く)
インタビューフォームには名前の由来が書いてあります。しかし、割と省略(資料無し)とされてしまう事が多い部分である事も、事実です。
例えば、ザイザル。以下は「一部」嘘っぱちです。どこが違うか分かりますよね。
【本製品の名前の由来は、「これ以上の効き目はなく後に続く薬は無い」という意味で、漫画シティーハンターを参考に「xyz」を頭文字とし、それにアレルギーを現すalを繋げ、xyzal(ザイザル)と名付けた】
まさかこんな事なんて、書けるわけ、ありませんよね。「シティーハンターって何?」って人はググってください…。20代の薬剤師は知らないですよね…。
ところで薬の名前に「強力」って名づけていいの?
昔からある薬の一部には、「強力」とネーミングに入っているものがあります。でも、これってアリなんでしょうか。
なんか「過大広告」のような感じがしてしまうんですよね。しかも大して「強力」でもなさそうなものに、そう名付けられている傾向があります。
2020年11月現在、医療用医薬品で「強力」と名づいているものは以下の通りです。
- 強力ポステリザン軟膏
- 強力ネオミノファーゲンシー(注)
- 強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏
個人的には、今は配合錠と名前が変わってしまいましたが、「強力ビフロキシン錠」も以前はよく使用されていた事を考慮にいれた上で、どうして「強力」と名づいているのか調べてみました。
いずれも昔からある薬です。今日において「強力」と名づける事は倫理上問題がありそうですが、インタビューフォームから探ってみます。
※強力のイメージ図
強力ネオミノファーゲンシー注
強力ネオミノファーゲンシーのインタビューフォームに、名前の由来についての記載があります。
結論から言うと、こちらも「強力」についての記載はありません。
ただその他の部分については、開発者:簑内収氏の名字から「Mino」をとり、貪食作用の「Phagozytose」に由来、シーは開発順での記号「C」とのこと。開発者の名前をとったんですね。
「ネオ」については、開発当初は「ミノファーゲン」であったことから、未来的な名前をという事で名づけられたものと推測できます。
またその途中で「強力」という部分も加わっていったと考えられますね。
強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏
強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏のインタビューフォームには、名前由来の記載が無いので省略します。
割と容器が古い感じで好きな薬なんですが、残念。
強力ポステリザン軟膏
ここでようやく1つ、「強力」の意味が分かることになります。
強力ポステリザン軟膏のインタビューフォームには、以下のようにあります。
ラテン語のposteriori(後方の)とsanare(治癒する)を組み合わせてPosterisanとし、また「強力」の由来は、ヒドロコルチゾンを配合していることからforte(強力)の文字を付した
ほう。
強力の意味は、ステロイドから来てるんですね。
つまり、強力ポステリザン軟膏は「もともとポステリザン軟膏であったものに、ステロイドを配合し、昭和40年に今の製剤となった」と記載があるので、それに合わせて「強力」と名付けられたと想像できます。
製剤が生まれ変わる途中で「強力」がつけられるようになった、という部分では、強力ネオミノファーゲンシーと同じですね。
このことは、強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏と同じと言えます。
この外用剤自体、ステロイドの強さとしては「強力」を冠するには相当微妙で「強力」でもなんともないのですが、薬の古さ(昭和33年)とも関係し、ステロイドの配合をもって、強力と名付けられた事が想像できます。
ビフロキシン配合錠(旧 強力ビフロキシン錠)
今は「強力」と入っていません。ビフロキシン配合錠のインタビューフォームになってしまい、「強力」の語源を辿る事はできませんでした。
いわゆるただのビタミン剤であるのに「強力」と名付けられるという部分で、一番興味深いところではあったのですが、無念、すみません。
(→後述しますが、なんとなく謎は解けました)
強力ビスラーゼ末(2017年製造中止)
参考まで近年まであった薬としてビスラーゼ末。成分はリボフラビンで、発売されたのは昭和29年です。
昭和29年は、ゴジラ第一作目の公開年です。なんと、マツモトキヨシの創業年でもあります、すごいですよね(何が
でもこの薬、知りませんでした、すみません。そして知らぬ間に製造中止となっており。。。
さて、こちらのインタビューフォームにも、「強力」の記載はありません。なんでリボフラビンで強力なのか、訳わからないですよね。
・・でも、おやと思う訳です、ビフロキシン錠もビスラーゼ末も、ビタミン剤です。
栄養剤のようなものに「強力」と名付けられた可能性
詳細は不明ながらも、2つのビタミン剤に強力の名前が冠されている事はわかりました。
そこでOTCを思い浮かべてみると、まっ先に思いつくのが「グロンサン強力内服液」と「強力わかもと」です。
グロンサンは栄養ドリンクですが、主成分はビタミン。強力わかもともビタミン含有。
他、いくつかのOTCを調べても、ビタミン含有剤で「強力」と名付けられているものが散見されます。
またOTCでは、生薬由来の製品に「強力」と付けられれているものもあり、そうであるならば、強力ネオミノファーゲンシーの主成分がグリチルリチンである、という事も、関係ないとは言えなさそうです。
残してほしい、「強力」の名(勝手な想い)
強力ビフロキシン錠は、ビフロキシン配合錠となりました。やはり内服薬であると、そういった名前転換はやむを得ない時代なのかもしれませんね。
ただ、強力ポステリザン軟膏が【ポステリザン配合軟膏】となったり、強力レスタミンコーチゾンコーワ軟膏が【レスタミンコーチゾンコーワ配合軟膏】となったりすのは、何か寂しいものがあります。
(てゆうかレスタミンコーワクリーム、チューブ製品出しておくれよ)
しばらくはそういう事もないかもしれませんが、・・そんなことより、外用剤の一般名は勘弁してくれ~と思う、毎日です。頭悪くて覚えきれないです。
(強ポスの一般名に、大腸菌死菌浮遊液と入ってるのもなんか気になる)
「強力」「強力」書いてたら剛力彩芽思い出してRT企画で前澤社長の100万あたらないかなって思いました。おわり。