仕事(diary)

薬剤師の手技喪失を憂うのは懐古主義か?薬局の生産性向上から考えてみた

昭和40年に初めて分包機が誕生しました。それまではまぁ医薬分業という部分でも進んでいなかったというものの、病院、医院、薬局における調剤で、散薬は“薬包紙に手分包”していました。

まだ廃れちゃいけない、手で分包

「薬包紙で薬を包むなんて何十年前の話なんだ。大学の授業で習っておしまいの過去の遺産だな。」なんて思ってしまう薬剤師はちょっと寂しいところで、OTCの「ノーシン」は今でも薬包紙に分包されていますし、災害時に散薬を分包せざるを得ない際は薬包紙を使用して分包する場面が生じてきます。

もっとも私自身、手できれいに分包出来るかと言ったら、できません。それこそ大学の授業で習ったきりです。

ただOTCのノーシンは薬包紙での飲みやすさを考慮してそのような作りに(分包機をはじめとして四角く成形された分包では隅に飲み残しが出ますし、そもそも飲みにくい形態なのです。薬包紙だと三角に折ってサラサラ服薬できます。)なっていますし、製薬工場で機械化された中での薬包紙への分包というものは、衛生面も問題は無く、メリットが存在する商品です。

効果でこそあえてノーシンでなくてはならないという事は無いでしょうが、その形態をとる事によってロングセラーとなっているとも言えそうです。

OTCというのは栄養ドリンクや胃薬を始め「やっぱこれじゃなきゃダメ」という根強い商品が少なからず存在していますね。

たださすがに今の時代、自分の子供の処方箋を持って調剤薬局に行き、そこでもし、手で分包された散剤が出てきたらちょっと嫌に思いますが。

進化する調剤機器

分包機が誕生してすでに50年以上。さすがに散剤の分包機を置いていない薬局はほぼ無いでしょうし、言うに及ばず、調剤機器のオートメーション化が進んでいます。

これは別に薬剤師の“モノからヒト”へ、という意味ではなく、調剤に掛かる時間の短縮に大きく貢献するものです。
薬局の生産性向上は機器の導入ありきと言っても過言ではありません。

それにより、患者さんと向き合う時間をより多く作る事ができるという事もまた事実です。

私の働いている薬局にはどれもありませんが、円盤型の散剤分包機や軟膏の自動混合機、水剤の自動分注機をはじめとし、いわゆる手間暇の掛かる調剤分野での機器導入がどんどん進んでいます。

円盤型の分包機は薬局を選ばず導入されていますが、軟膏機は皮膚科、水剤機は小児科など、取り扱う科目が高い薬局に進んで導入されています。

皮膚科の門前薬局なのに

皮膚科を多く取り扱う薬局であれば、かなり多くの薬局で軟膏の自動混合機が導入されているのかと思います。

一度使えば手で混合するのが考えられない程、めちゃめちゃ時間短縮になりますし、なにより軟膏ヘラでは全く太刀打ちできないレベルできれいに軟膏壺に詰める事ができます。

私が患者の立場であっても、きれいに詰められた薬をもらうほうが気持ちがいいと思うはずです。

ただ一方、なんとなく懸念があるのです。懸念というよりは悲劇に近いかもしれません。

それはもし新卒で薬剤師がその薬局に入り、3年4年経ち、特に皮膚科において薬剤師として経験をある程度積んだ薬剤師が“もっとも軟膏板で軟膏べらを使って混合するのが下手な薬剤師”状態になってしまうのです。
もはや悲劇というよりも喜劇に近い状態です。

もっと悲しいVマス捲けない薬剤師

円盤型の散剤分包機でしか調剤をした事がない薬剤師はもっと厳しい状況です。
例えば薬剤師としての経験も5年経ち、チェーン薬局であれば異動や、年収をあげるためのステップアップ転職の可能性もあるでしょう。
転職の際に薬局で経験を積んだ薬剤師が示す事ができるのは、調剤経験年数くらいなものです。

そのような中で「薬剤師経験5年」というある程度の看板を背負っていながらも、いまだ大多数の薬局で使用されているVマスの分包機で散剤を作る事が出来ないのです。

もちろん練習すれば1週間、2週間である程度は出来るようになるでしょうが、新入社員に教えるのとはだいぶ意味合いが違います。
即戦力とはとても言い難い状況です。それ自体を問題と思っている訳ではありません。そうした状況が生まれてしまう事に一抹の悲しさを覚えてしまうのです。

薬剤師にしか出来ないこと

Vマスで散剤を捲けない薬剤師、軟膏板とヘラで混合出来ない薬剤師、こうした事を憂いてしまう私は時代遅れの感覚なのでしょうか。

58,000薬局もあるうち、まだそうした機器が設置されていない薬局がほとんどと言ってもいい中、今後より遍く普及していく(かもしれない)事を考えれば、そう思う事は杞憂であり、ただの懐古主義者なのかもしれません。

でも「軟膏板でヘラを使って軟膏を混合する」なんていうのは、私は薬剤師としての技術の差がもっとも出やすい、調剤技術の骨頂だと思うのです。

いかに手早く軟膏を混ぜ、軟膏ツボに入れる事ができるか。いかに均一にVマスに散剤をならす事ができるか。他の医療従事者には決してできない、そうした手技こそが薬剤師にしか出来ない面白みだとも思うのです。“セットしてボタン押すだけ”って悲しいと思うんです。

う~ん、やっぱりただの懐古主義なのかと思いましたが、でもどうやら少し違うようです。
予算の都合上、私の働く薬局ではなかなか導入してくれない事に対する、単なる妬みなのかもしれません。はやくうちにも導入してくれぃ。
セットしてボタン押すだけ、最高じゃん。

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